世界のビジネスにも通用するナゴヤ流。 「お値打ち」が21世紀型、成功の秘訣です。
名古屋のビジネスでたびたび耳にする「お値打ち」という言葉。関東などでいう「お買い得」という意味に近いものの、似て非なる名古屋独特の言葉です。「お買い得」とは買う時に安くて得をするというニュアンスが強いのに対し、「お値打ち」とは買った後もその商品がどれだけ役に立ち、長く使えるかという、実質的なニュアンスが含まれます。決して「安いもの」という意味ではなく、「コストパフォーマンスに厳しい名古屋人の感覚で“質(価値)”と“値段”のバランスが良い」という意味で、ある程度高級な商品に対して使われることがもっぱらです。
例えば、100円ショップは「お値打ち」かと問われれば、それは否だと言えます。100円相応のものを100円で売っているにすぎないからです。それに対し、普段は10万円するプジョーの自転車が5万円で販売されるのなら、これは「お値打ち」です。つまり「普段は絶対にこんな値段で売ることができないけれど、今日は特別に割引して販売」という場合に適用されるのです。これに限定という条件が加われば、さらに「お値打ち」となります。
いまや全国にその名を轟かせているナゴヤのモーニングサービス。コーヒー1杯の値段で無条件でトーストやゆで卵などがついてくるのはご存知かと思います。これも、「お値打ち」文化の一例です。コーヒー1杯分の値段で付加価値(この場合はトーストやゆで卵など)がついてくるのに加え、モーニングの時間だけという限定のサービスだからです。さらに、名古屋の喫茶店ではほとんどの店で「回数券」なるものを出しています。これは鉄道やバスの回数券と同じで、10杯分のお金を先払いすると、11杯分の券(チケット)がもらえるという仕組みになっています。つまり、1杯分無料となるのです。常連客はこのチケットを店にキープしている人が多く、このチケットでモーニングをいただけば、さらに「お値打ち」感がアップするのです。名古屋人が愛してやまない喫茶店の人気の秘密はこの「お値打ち」サービスによるところが大きいと言えます。
他にも、ナゴヤを賑わせた「愛・地球博」。期間中、繰り返し入場できる全期間入場券は、地元名古屋を中心に約45万枚も売れ、券を買った人は平均して11回入場していたとか。全期間入場券は大人一人1万7,500円。一回4,600円という通常の大人入場料に比べれば、相当割安。4回行けば元が取れてしまうのですが、前に述べたとおり、平均が11回。最高では270回入場した人もいたほど。元を取るだけでは飽き足らず、「お値打ち」感をどれだけアップさせるかが重要と言えます。「お値打ち」感が十分に味わえるこの全期間入場券、「お値打ち」に敏感な地元ナゴヤ人の購入が多かったのも、頷けるのではないでしょうか。
さらに海外ブランドの代名詞とも言える「ルイ・ヴィトン」。ナゴヤでは、誰が見てもひと目でそれと分かるようなロゴマーク入りの定番モノグラムが大人気。これは「他の人と一緒でなくては、どうにも居心地が悪い」という名古屋人気質によるところが大きいと言えます。それさえ持っていれば、人並み=安心という図式が名古屋では成り立っており、ほかの人から「ルイ・ヴィトン」と気付いてもらえなければ、高いお金を出してまで買った意義が無いと考えてしまうのです。逆に言えば、それと気付いてもらえれば、リサイクルショップで購入したものでも構わないのです。すなわち「お値打ち」感がグッと強くなります。このように、名古屋のビジネスを制するにはまず、この「お値打ち」感を強く意識させることが重要であると言えます。
日本は昔からヨーロッパの貴族が好んだ高級文化より、祭り、花火、歌舞伎など一般大衆化されているもの、すなわち中の上クラスの文化が好まれる傾向にありました。現代の日本の中では、とりわけナゴヤでこの傾向が根強くみられます。また、トヨタが大衆車をヒットさせ、世界有数の自動車メーカーに躍進していることを思えば、ナゴヤは大衆のモノを作ることにも強いと言えるでしょう。世界に目を向けてみると、アジアなどの発展途上国が今、新たなビジネスとして注目を浴びています。20世紀になって大衆が実力をもつ社会を迎えると、アジアや発展途上国では生活水準の上昇、文化享受能力の向上・平準化をいう傾向が進みました。そこに着目し、自社のノウハウを注ぎ込むべく、様々な世界企業がアジアビジネスでの事業拡大を目指しています。これからのビジネスを考えると、アジアなどの発展途上国が底上げすることで、大きな大衆クラスの需要が生まれ、大衆文化=中の上クラスを基盤とするような経営戦略が狙い目となっています。つまり、日本で大衆文化が最も発達している名古屋のビジネスで成功すれば、日本中どこでも成功でき、さらに世界のビジネスでも成功すると言えるのではないでしょうか。